試験的考察 被写界深度

カメラの被写界深度については、Web上で、計算式や計算フォームがいろいろ公開されています。

一般論として、

  • 絞り込めば深度が深くなる
  • 望遠より広角の方が深度が深い
  • フィルムサイズ・撮像素子サイズが小さいほうが深度が深くなる

といったことは、おそらく広く知られていると思います。

 


 

しかし、たとえば小さな模型(Nゲージ車両など)を実感的に写そうとする場合、上記の一般論では一筋縄ではいかない、という印象を持ちましたので、所感を記しておくことにしました。

 

1 撮像素子サイズについて

撮像素子サイズ(イメージセンサーサイズ)が小さいと、同じ画角であればレンズの焦点距離が短くなるので、深度が深くなり、ピントの合う範囲が広がります(許容錯乱円も小さくなりますが、焦点距離は2乗で効いてくる、という違いがあります)。

問題は、それは同じ絞り値であった場合の話である、ということです。たとえばフルサイズの場合、最小絞りはF22であることが多く、望遠レンズなどではF32もあります。
他方、素子サイズの小さなコンパクトデジカメなどでは、最小絞りがF8くらいであったりします。回折現象への配慮、などという説明をみた記憶があります。

このように、絞り値が同じにならない場合、素子サイズの大きなカメラを使うか小さなカメラを使うかは、ある種のトレードオフになり、一概には言えません。

2 レンズの画角について

焦点距離の短い広角側で写したほうが深度が深くなるのは事実ですが、被写体が画面上で小さくなってしまいます。被写体の画面上の大きさを一定に保つ場合、望遠に比べ、広角では被写体に近づかなければなりません。

レンズと被写体との距離は、被写界深度計算にかなりシビアに効いてきます。近くなれば、深度は浅くなります。

これもある種のトレードオフとなり、単純ではありません。

3 トリミングその他

トリミングは有力な手段だと思いますが、画質とのトレードオフとなります。またトリミングにより拡大率が上がれば、許容錯乱円も小さくなります。

また、深い絞込みは、回折によりディテールが若干甘くなります。

4 撮影意図

一般的に、画質という点では、撮像素子サイズが大きいほうが有利です。狭い場所でも写せる取り回しでは、小さなカメラということになります。

また、実感的な作画をしようとすると、深度にばかり気をとられて不自然な構図とならないよう注意する必要もあります。

 

なお、深度合成については、私が試みたことがないので、ここでは触れません。

 


 

結局、いろいろ写してみて、相対的に最も実感的な画像が得られたとき、それがこの場合の最適解であった、ということになるのではないか、と思います。

 

下は、Nゲージ鉄道模型の写真です。

 

TOMIX EF210とコキ104

 

木製展示台に乗せたものを、青空の背景をつけて写したものです。
細かなセッティングのミスはありますが、ピントは結構あっていて、3つ目のコンテナの中ほどくらいまでは不満のないところではないでしょうか。

この写真は、いろいろ考えた末、フルサイズ+望遠レンズ(200mm)で撮影したものです。
被写体とレンズとの距離を敢えてとることで、深度の浅い望遠レンズでも、ピントの合う領域を必要量確保できるのでは、という考えです。絞り値はF22です。
写真自体も望遠レンズらしい写りになっています。

ライティングは部屋の蛍光灯のみですが、光が当たる場所を工夫して、朝日のようにも見える感じになっています。機関車(EF210)が、そこそこ格好良く写っているので、架線がないにもかかわらず、一見では本物と間違ってくださる方もあります。

 

ちなみに、このEF210(桃太郎)は、TOMIXの、「JR EF210形コンテナ列車セット」(92491)に入っていたものです。コキとコンテナが目当てで購入したものですが、実は機関車が細密感があってなかなかよいできでした。なお、写真のコキとコンテナは単品売りのものです。
誘導員手すりと解放テコが装備されていない簡略型ですが、それがかえって、自分で金属線で装着して、単品商品より精密感を出すべくチャレンジする余地を残していたといえます(作例では手すりが少し小さくなってしまいました。解放テコ受け金具はかなりよい出来だと思います)。
その意味では、このセットは、金額的にもかなりお買い得な気がします。