新旧の宇治橋

部屋の整理をしていたところ、保管場所がわからなくなっていたプリントが出てきました。

宇治川にかかる宇治橋は、日本三古橋の一つとされ、現在の橋は1996年に架け替えられたものです。

現在の橋は、それまでの橋の下流側に新たに架けられ、道路もあわせて移動しました。

京阪の宇治駅は、それまではJR線をくぐった先の、宇治橋の近くにホームがありましたが、この架け替え等に伴い、三室戸寄りにホームが移設され、旧ホーム跡はロータリー等になりました。

 


 

現在の橋(新宇治橋)が完成した当初、それまで架かっていた旧宇治橋は、通行はできなかったものの、まだ残っていました。

プリントは、そのとき撮影したものです。20年以上前のもので、退色が見られますが、とくに補正はしていません。

 

先代の宇治橋(旧宇治橋):1996年

先代の宇治橋(旧宇治橋): 1996年

現在の宇治橋から、先代の宇治橋を撮影したものです。「三の間」も写っています。側面に傷みが目立ちます。

写真でもわかるように、先代の宇治橋は、かなり狭いものでした。歩道はなく、中央線もないようです。この上を、両方向に、自動車・歩行者・自転車などが行きかう状況で、渋滞が頻発するうえ、やや危険な状態になっていました。

旧宇治橋の向こう側、上流方向の雰囲気は、あまり変わっていないようです。朝霧橋も見えます。

 

新旧の宇治橋:1996年

新旧の宇治橋 : 1996年

現在の宇治橋の三の間から、新旧の宇治橋を撮影したものです。

現在の宇治橋が、先代に比べ、かなり大きく立派になっていることがわかります。車線数も倍増していますが、歩道がゆったりと取られているところに、大きな改善が見られます。

大きく、がっちりとした造りになりましたが、様式は踏襲されていることがわかります。

旧宇治橋の奥にある、「バスのりば」が、時代を感じさせます。

 

 

なお、「京阪時刻表 vol.10 1997年版」には、京阪沿線の航空写真集がついていますが、三室戸駅・宇治駅 のページには、新旧の宇治橋がしっかり写っています。

 

 

試験的考察 被写界深度 続

前々回の記事「試験的考察 被写界深度」で、被写界深度を決める要因として、

焦点距離、絞り値、被写体距離、許容錯乱円

をあげましたが、それらがどの程度効いてくるのか、簡単なシミュレーションをしてみました。

 

被写界深度と各変数との関係

 

式は、ネット上で広く紹介されている近似式です。マクロ撮影では誤差が大きくなるとされています。
($A$2:許容錯乱円直径 $C$2:レンズの焦点距離 $E$2:絞り値 $G$2:被写体距離)

 

いずれも、ひとつの変数のみを変えています。実際の撮影現場では、同時にいくつも変数が変わる(撮像素子サイズが変われば許容錯乱円も焦点距離も被写体距離も絞り値も変わる可能性)ことも多いのですが、ひとつの目安としては有効な計算だと思います。

はじめに、フルサイズの標準的事例についてのテスト計算をしています。
中段以降で、それぞれの変数を変えた場合に被写界深度にどの程度影響があるかを計算しています。
焦点距離の影響の計算の場合のみ、極端に短い焦点距離に対応する(なるべくマイナスの数字が出ないようにするなど)ため、被写体距離を30cmにしています。そのため長焦点では非現実的な例となっていますが、計算のための便宜と見てください。

 

さて、この表から、非常に大雑把ではありますが、以下のことが言えると思います。

許容錯乱円は、ほぼリニアに影響する(半分になれば、深度もほぼ半分になる)。

絞り値も、ほぼリニアに影響する(半分になれば、深度もほぼ半分になる)。

そもそも、式においてこの二つはセットで出てくるのでウエイトは当然同じになります。

焦点距離は、ほぼ(逆)2乗で効いてくる(焦点距離が倍になれば、深度はほぼ1/4になる)。

被写体距離も、ほぼ2乗で効いてくる(距離が半分になれば、深度はほぼ1/4になる)。

ただいずれの場合も、深度が浅くなる側に、若干厳しくなります。

 

比較対象に大きな差がある場合には誤差が大きくなりますが、2倍程度の差であれば、おおむねこういえそうです。

ちなみに、私は古い人間ですので、フルサイズの許容錯乱円の計算では、フィルム時代の0.03mmを使用しています。

 


 

以上から、撮像素子の小さなカメラで、同じ場所から同じ画角でしかも同じ絞り値で撮影すれば、許容錯乱円より焦点距離の効果が勝り、深度は深くなることがわかります。

ただし絞り値が同じにならない場合、深度を深くする効果は弱くなります。

たとえば Canon S120 (センサーサイズ 1/1.7型)の場合、フルサイズに比べて4.6倍相当に変数が変わります。許容錯乱円で4.6倍損する代わりに、焦点距離で4.6^2倍得する形になります。しかし最小絞りがF8です。仮にフルサイズをF22とすれば2.75倍(F32とすれば4倍)の違いです。
このため、F22のフルサイズとの比較では、結局1.7倍ほどの効果にとどまります(あくまでざっくりとした計算です)。

なおここで、許容錯乱円は、画素ピッチレベルのシビアなものではなく、フィルムカメラ風に、フルサイズをたとえば0.03mmとして、センサーサイズに比例して小さくなる、という形の計算をしています。後で拡大することになるので、その分厳しくなる、という比例的計算です。

 

実際に、フルサイズ(許容錯乱円0.03mm)・焦点距離50mm・被写体距離50cm・F22 と、 1/1.7型(許容錯乱円0.0065mm)・焦点距離10.8mm・被写体距離50cm・F8 とを比較すると、

フルサイズ:前方被写界深度 5.83 後方被写界深度 7.60 合計 13.43

1/1.7型:前方被写界深度 9.11(1.56倍) 後方被写界深度 14.34(1.89倍) 合計 23.46 (1.75倍)

となりました。単位はcmです。

絞りの差で2倍を切ってしまいましたが、深度の合計値では、10cm以上の広さがあります。模型撮影などでは大きな差で、やはり、撮像素子サイズが小さいほど深度が深い、は一般論として正しいと感じました。

 


 

広角か望遠かについても、以下のようなことが考えられます。

画角と焦点距離は、ざっくり言って反比例関係にあり、また、被写体距離と被写体の見かけの大きさに反比例関係がある、と見れば、被写体の見かけの大きさを同じにする場合、焦点距離が半分なら、半分の距離で写すことになる、となるのではないでしょうか。

とすると、広角は望遠に比べ、焦点距離で約2乗分得するが、被写体距離で約2乗分損をする、ということになります。

具体的な数値は計算の必要がありますが、「大差ないのでは」という疑いが生じます(広角と望遠では比が2倍を大きく超えてきますので、単純な計算との誤差がそれなりに生じているであろうことには注意が必要です)。

 

例として、フルサイズ(許容錯乱円0.03mm)・F22において、焦点距離28mmと焦点距離200mmとを比較してみました。

200mmの画角は横が10.29度(Wikipediaより)なので半分が5.145度、被写体距離を200cmとして、横半分に200*tan(5.145°)=18.01cm入ることになります。28mmの横画角の半分は32.75度(同)なので、横半分が18.01cmになる距離は、18.01*(1/tan(32.75°))=28cm、ほぼ焦点距離と比例でした。

その場合の被写界深度は、

焦点距離28mm:前方被写界深度 5.34 後方被写界深度 8.63 合計 13.97

焦点距離200mm:前方被写界深度 6.39 後方被写界深度 6.83 合計 13.21

となって、28mmのほうがわずかに広いものの、大差なし、という結果となりました(単位cm)。
参考までに、同様の計算をすると、24mmの合計深度が14.32 35mmが13.72 50mmが13.44 100mmが13.28 500mmが13.24 などとなり、わずかに広角側が有利なものの、大きな差ではありません。

 

やや意外感のある結果です。
画面の横幅を同じにする、という前提に甘さがあるのかもしれません。「画面の中での被写体の長さの割合を同じにする」というのがより正しいのだと思いますが、具体的な数値の置き方はどうなるのか。被写体が斜めに置かれている場合はどうするか。
仮に広角の被写体距離が30cmなら、合計深度は16.19cmとなって、少し広角有利とはなります。

ちなみに、絞り値をF22に固定で、被写体距離を、単純に焦点距離の10倍(つまり50mmなら50cm)とした場合、焦点距離が500mmであっても28mmであっても、合計深度は13cm台です(広角になるにつれ少しずつ大きくなります)。
許容錯乱円を、最近の基準値0.026mmとすると、合計深度は11cm台と、少し厳しくなります。

 

少なくとも、広角のほうが圧倒的に有利であるとまではいえない、という印象です。

 

以上から、焦点距離の選択については、撮影意図(プロポーションの選択など)や撮影環境で決定してよいのではと思います。

撮影環境については、たとえば広角の場合、後ろが広く入りますので、(たとえ青空でも)背景も広く用意しなくてはなりません。望遠の場合、背景は小さくて済みます。また、広角で写せるほど近寄れない(あるいは逆に望遠が使えるほど引けない)、という場合も考えられます。

 


 

トリミングの有効性について

同じ焦点距離のレンズで、同じ絞り値で写す場合、少し距離をとって、少しトリミングする、という方法は、若干の画質低下と引き換えに、被写界深度を深くすることができます。被写体距離と許容錯乱円の効き方の差です。ざっくりした計算で、2乗分得をして、1乗分損をすることで、結果として1乗分得をする、というイメージです。

また、少し広角にして撮影し、少しトリミングする、という方法でも、同様の効果が期待できます。

ただ、あまり極端にトリミングすると、画素数の不足やレンズの収差の目立ちにより、画質の劣化が無視できなくなってきます。最終的に必要な画素数などを頭に入れながら撮影することも一つかと思います。

 

先の記事で作例にあげた写真は、ほぼ200mmの最短撮影距離で写しており、フルサイズをあまりトリミングしていないのですが、トリミング前提でもう少し引いて写せば、コンテナすべてにピントが合ったかもしれません。

 

 

以上、計算や考え方に誤りがあるかもしれませんが、意外感のある結果もありましたので、ご参考までに。

 

東寺五重塔と新幹線:山撮り

下は、伏見稲荷大社のある稲荷山から、東寺~梅小路方面を撮ったものです。

(このページは画像をクリックすると、画像が別タブで開きます)

 

撮影地は、稲荷山の「四つ辻」から、北に延びる荒神峰への石段を登りきった先にある平坦地です。
京都駅方面は、実は四つ辻のほうが展望が少し広いのですが、四つ辻は稲荷山のメインルートにあり、格好の展望スポットですので、いつも人がいっぱいで賑わっています。

こちらの平坦地も人の来訪はありますが、四つ辻よりずっと静かで落ち着いて撮影できます。

東寺五重塔・梅小路機関庫と新幹線 稲荷山から

画面左に東寺があります。右端近くには梅小路の扇形機関庫が見えます。

東寺五重塔と新幹線の組み合わせで、五重塔が手前にある構図は、低い場所だと新幹線が隠れてしまうので、あまり撮影例がないように思い、試みに山撮りを敢行してみました。
この場所だと、距離は遠いですが、編成全体が入る、というメリットもあります。

12月の撮影ですが、日差しのためか、陽炎がかなりあり、双眼鏡では像が揺らいでいました。

レンズは200mmです。梅小路と東寺を両方入れるなら、これでちょうどといえますが、東寺と新幹線にしぼって写すなら、300~400mmくらいがあればよかったかもしれません。

 

 

下は、東寺五重塔と新幹線にしぼってトリミングをしたものです。

東寺五重塔と新幹線(1)N700系 稲荷山から

左手前の円形屋根の建物は京都テルサ(京都府民総合交流プラザ )、左奥で日光を反射しているのは、京都アクアリーナです。右奥には西京極の照明塔が見えます。

この新幹線列車は、京都駅11時19分発下り「のぞみ」で、N700系と思われます。

 

 

もう一本、京都駅11時36分発下り「こだま」の通過の様子です。

東寺五重塔と新幹線(2)700系 稲荷山から

この列車の車両は、ライトの位置から700系と思われます(扉の窓位置が低いタイプと見えます)。N700系に比べて、窓がやや大きいため、全体的にくっきり感があります。

 

今回の撮影の印象としては、撮影距離が遠いと、陽炎の影響を受けてディテールがつぶれる(あるいは歪む)、という問題が大きいと感じました。
東寺五重塔と16両編成の大きさのバランスはまずまずと思うのですが、なかなか難しいところです。

 

 

試験的考察 被写界深度

カメラの被写界深度については、Web上で、計算式や計算フォームがいろいろ公開されています。

一般論として、

  • 絞り込めば深度が深くなる
  • 望遠より広角の方が深度が深い
  • フィルムサイズ・撮像素子サイズが小さいほうが深度が深くなる

といったことは、おそらく広く知られていると思います。

 


 

しかし、たとえば小さな模型(Nゲージ車両など)を実感的に写そうとする場合、上記の一般論では一筋縄ではいかない、という印象を持ちましたので、所感を記しておくことにしました。

 

1 撮像素子サイズについて

撮像素子サイズ(イメージセンサーサイズ)が小さいと、同じ画角であればレンズの焦点距離が短くなるので、深度が深くなり、ピントの合う範囲が広がります(許容錯乱円も小さくなりますが、焦点距離は2乗で効いてくる、という違いがあります)。

問題は、それは同じ絞り値であった場合の話である、ということです。たとえばフルサイズの場合、最小絞りはF22であることが多く、望遠レンズなどではF32もあります。
他方、素子サイズの小さなコンパクトデジカメなどでは、最小絞りがF8くらいであったりします。回折現象への配慮、などという説明をみた記憶があります。

このように、絞り値が同じにならない場合、素子サイズの大きなカメラを使うか小さなカメラを使うかは、ある種のトレードオフになり、一概には言えません。

2 レンズの画角について

焦点距離の短い広角側で写したほうが深度が深くなるのは事実ですが、被写体が画面上で小さくなってしまいます。被写体の画面上の大きさを一定に保つ場合、望遠に比べ、広角では被写体に近づかなければなりません。

レンズと被写体との距離は、被写界深度計算にかなりシビアに効いてきます。近くなれば、深度は浅くなります。

これもある種のトレードオフとなり、単純ではありません。

3 トリミングその他

トリミングは有力な手段だと思いますが、画質とのトレードオフとなります。またトリミングにより拡大率が上がれば、許容錯乱円も小さくなります。

また、深い絞込みは、回折によりディテールが若干甘くなります。

4 撮影意図

一般的に、画質という点では、撮像素子サイズが大きいほうが有利です。狭い場所でも写せる取り回しでは、小さなカメラということになります。

また、実感的な作画をしようとすると、深度にばかり気をとられて不自然な構図とならないよう注意する必要もあります。

 

なお、深度合成については、私が試みたことがないので、ここでは触れません。

 


 

結局、いろいろ写してみて、相対的に最も実感的な画像が得られたとき、それがこの場合の最適解であった、ということになるのではないか、と思います。

 

下は、Nゲージ鉄道模型の写真です。

 

TOMIX EF210とコキ104

 

木製展示台に乗せたものを、青空の背景をつけて写したものです。
細かなセッティングのミスはありますが、ピントは結構あっていて、3つ目のコンテナの中ほどくらいまでは不満のないところではないでしょうか。

この写真は、いろいろ考えた末、フルサイズ+望遠レンズ(200mm)で撮影したものです。
被写体とレンズとの距離を敢えてとることで、深度の浅い望遠レンズでも、ピントの合う領域を必要量確保できるのでは、という考えです。絞り値はF22です。
写真自体も望遠レンズらしい写りになっています。

ライティングは部屋の蛍光灯のみですが、光が当たる場所を工夫して、朝日のようにも見える感じになっています。機関車(EF210)が、そこそこ格好良く写っているので、架線がないにもかかわらず、一見では本物と間違ってくださる方もあります。

 

ちなみに、このEF210(桃太郎)は、TOMIXの、「JR EF210形コンテナ列車セット」(92491)に入っていたものです。コキとコンテナが目当てで購入したものですが、実は機関車が細密感があってなかなかよいできでした。なお、写真のコキとコンテナは単品売りのものです。
誘導員手すりと解放テコが装備されていない簡略型ですが、それがかえって、自分で金属線で装着して、単品商品より精密感を出すべくチャレンジする余地を残していたといえます(作例では手すりが少し小さくなってしまいました。解放テコ受け金具はかなりよい出来だと思います)。
その意味では、このセットは、金額的にもかなりお買い得な気がします。

 

乗算において最も効率的な数

例:

10 を、足して 10 となるいくつかの数(すべて正の数とします)に分けます。
4+6 とか 2+3+5 とか 2+2+2+2+2 とか。

今度は、それらの数をかけます。つまり足し算の記号を掛け算にします。

4*6=24  2*3*5=30  2*2*2*2*2=32 などとなり、積の値は分割の仕方に応じてさまざまになります。

問:積が最も大きくなる分割方法を求む(最適分割問題)

 


 

分割の個数が同じならば、等分割にするのが最も積が大きくなります。4*6<5*5

ここから一般化して、数 a(ただし a>0)を p 個に等分割し、分割した数 x=(a/p) を p 乗して積を作る問題とします。

たとえば、a=10 の場合、
p=1 のとき、積 y=10
p=2 のとき、y=5*5=25
p=3 のとき、y=(10/3)^3=37.037037…
p=4 のとき、y=2.5^4=39.0625
p=5 のとき、y=2^5=32
p=10 のとき、y=1^10=1
となります。

さらに、y=x^p=(a/p)^p は pが整数でなくとも成立するので、整数個ではない分割をも認めることとします(ただし a>0, p>0)。つまり3.5個に分割して3.5乗する、という形も解として可能とします。

 


 

ここで、分割した数 x のほうから、a に x が何個あるか、という形で考えると、p=a/x なので、

y=x^(a/x) となり、等分割された数 x を定めれば、積 y が決まります。

 

x,y は正なので、対数をとって、log(y)=(a/x)log(x)  として、両辺をxで微分すると、

(1/y)(dy/dx)=(a/x)(1/x)-(a/x^2)log(x)=(a/x^2)(1-log(x)) よって、

dy/dx=(x^(a/x))(a/x^2)(1-log(x))=a(x^((a/x)-2))(1-log(x))

 

ここで、x>0 のとき、x^((a/x)-2)>0 なので、極値は log(x)=1 つまり

x=e (=2.71828…) のときとなります。

また、導関数の正負は、1-log(x) の正負によりますから、0<x<e で導関数は正、e<x で導関数は負となります。

 

x<1 となると、y は(a が大きいときは急速に)0 に近づく一方、(厳密な証明は省きますが)x が非常に大きくなると、0乗に近くなり、y は 1 に近づきます。

したがって、x=e のときの極値は、極大値かつ最大値となります。

 

つまり、自然対数の底 e を単位として a を分割し、 e が何個あるか、という形にして、

e^(a/e) により積を求めれば、これが、a を分割して得られる最大の積となります。

これは、はじめに与えた数 a の如何に関わりません。

 

 

はじめの例において、a=10 の場合には、最大値は、x=e のとき、39.5986… となります。
(3.67879… 個に分割)

改めて見ると、4分割の場合の値 2.5^4=39.0625 は、かなりよい値といえますが、
2.5 が e=2.71828… に近い値であったためであったことがわかります。

 


 

グラフにしてみると、x の変化に対する y の挙動がよくわかります。

以下は、y=x^(a/x) の、a=10 の場合のグラフです。
(Excelで計算およびグラフ作成:横軸が x, 縦軸が y)

y=x^(a/x)のグラフ。ネイピア数eのときに最大値をとること:a=10の場合

x が 1 より小さくなると、0 に近い数を何回も掛け算することになるので、0 付近に張り付くようになります。x が大きくなると、0乗 (=1) に近づいていきますが、下がり方は比較的にゆっくりです。
最大値は、x=e のときです。なかなかきれいなグラフだと思います。

 

また、y が x=e のときに最大値をとることは、a が 1 より小さい数であっても当てはまります。

以下は、a=0.1 の場合のグラフです。

y=x^(a/x)のグラフ。ネイピア数eのときに最大値をとること:a=0.1の場合

面白いのは、元の数 a が小さくても、y は、x>1 で、1 より大きくなることです。

x=1 のときに、必ず 1 を通ります(1^p の形なので)。また、x → ∞ での y の極限は 1 なので、
x>1 で、常に y>1 になります(0.01乗とかであっても、0乗(=1)よりは大きい)。

やはり、最大値は、x=e のときです。

 

なお、a=1 の場合は、グラフの形は、上掲2図の中間的なものになります。

 


 

自然対数の底 e (ネイピア数)は、円周率 π とは異なり、その特別さに関して、具体的イメージのわきにくい数だと思いますが、こういった、単純な掛け算の問題の最適解という形で、いわば掛け算で最も効率的に大きくなる数として現れます。

e の持つ特別な性質として、なかなか面白い例なのではと思います。

 

 


 

<追記>

(1) e^π と π^e の、どちらが大きいか、という問題があります。

上述の考察は、a^b(a,b>0:ただし底と指数の積 a*b は一定)の形の数において、a^b が最大であるのは、底を e にした場合(つまり e^(a*b/e) )である、ということができます。

今の問題では、底と指数の積は e*π で一定ですので、指数の形(a^b)の数は、e を底とした場合に最大になりますから、そこから直ちに、e^π > π^e であることがわかります。

(2) また、5^7 と 7^5 の比較(これは35をどう分割するかという問題)、あるいは、71^73 と 73^71 のような、ともに e より大きな数の底と指数の交換の場合、底が e に近い 5^7 , 71^73 のほうが大きいことが、上述の考察およびグラフから明らかです。

さらに、交換でなくとも、底と指数の積が一定であり、ともに底が e より大きい(あるいは小さい)数同士の比較においても、たとえば、3^8>4^6 のように、底の e への近さによって大小がわかります。

(3) x^y=y^x を満たす自然数(ただし x<y)、については、上述の考察およびグラフから明らかなように、交換して同じになる可能性は、一方が 1<x<e の場合のみです。つまり可能性のあるのは x=2 のみです。
もう一方の数については、3 は e に近すぎて 2^3<3^2、4 は 2^4=4^2=16 となって成立、5 は e から遠すぎて 2^5>5^2、二次関数 x^2 と指数関数 2^x の形から、それ以降はすべて x^2 のほうが小さい、となります(厳密に示すには、もう一度微分が必要かもしれません)。

この問題の場合、ペアがひとつしかないことを厳密かつ簡潔に示すには、f=log(x)/x から考察するのが筋のようです(x^y=y^x から、対数をとって整理して、log(x)/x=log(y)/y を導き、f=log(x)/x を微分してグラフを書くなど)。